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核兵器は戦争の抑止力になるの?

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みなさんは「核兵器」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
「広島や長崎の原爆」、「一度使えば世界が終わるような恐ろしい兵器」―そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。

では、この疑問についてはどうでしょう。

「核兵器って、本当に戦争を止める力になるの?」

今回はこの問いについて、実際に研究されている内容をもとに、わかりやすく解説していきます。

核兵器が“戦争を防ぐ”って本当?

核兵器には、ものすごい破壊力があります。一発で都市を吹き飛ばし、何十万人もの命を奪うほどです。
そんな兵器を使えば、使った国も、世界中から非難を受け、大きなリスクを負うことになります。

だからこそ、多くの国は「相手が核兵器を持っているなら、自分も攻撃しない方がいい」と考えるようになりました。
これを「核抑止(かくよくし)」といいます。つまり、「核兵器を使われたら困るから、最初から戦争をしかけない」という考え方です。

たとえば、アメリカとソ連が冷戦時代に直接戦争をしなかったのは、どちらも核兵器を持っていたから、お互いに「攻撃すれば自分も滅びる」と思いとどまったからだと考えられています。

核兵器を持っていれば安心なの?

一見、核兵器を持っていれば安全そうに思えます。でも、話はそんなに単純ではありません。

ここで、自分の国がもし核兵器を持っていたらどうなるか、いくつかのパターンで考えてみましょう。

パターン1:自国が核を持ち、相手が持っていない場合

この場合、相手国は「相手を攻撃したら、核で反撃されてしまう」と思って、戦争を思いとどまるかもしれません。
つまり、相手が核を持っていなければ、核兵器は強い抑止力になる可能性があります。

たとえば、イスラエルは周囲の国々との戦争が絶えなかったため、秘密裏に核兵器を持つようになりました。それによって、周辺国に対してある程度の抑止力を得たとも言われています。

パターン2:自国も相手国も核を持っている場合

この場合、お互いに「核を使えば、自分もやられる」と分かっているので、核兵器を使った戦争にはなりにくくなります。

でも、通常の武器(戦車やミサイルなど)での戦争を防げるとは限りません。なぜなら、お互いに核を使えば自分もやられることがわかっているので、核兵器は実際には使えない武器になるからです。

実際、インドとパキスタンはどちらも核兵器を持っていますが、国境での小規模な戦闘は今でも何度も起きています。

パターン3:自国は核を持っておらず、相手国だけが核を持っている場合

このパターンが一番心配かもしれません。でも、相手国がすぐに核兵器を使うことは難しいでしょう。

なぜなら、核兵器は「人道に反する兵器」として、国際的に強い批判を受けるからです
核を使えば、使った国も世界中から非難されたり、経済制裁を受けたりして大きな損害を受けます。

だから、たとえ核を持っている国でも、核兵器を簡単には使えません。実際に、ロシアは2022年に始まったウクライナへの侵攻に際して核兵器を使用していません。

核を持とうとしただけで攻撃される?

核兵器を「戦争を防ぐため」に持とうとする国もあります。でも、それが逆に戦争を招くこともあるんです。

記憶に新しいところでは、2025年6月にイスラエル軍とアメリカはイランの核開発施設や軍事施設を先制攻撃しました。

つまり、核兵器を持とうとすること自体が「危ない動き」と見なされ、攻撃される可能性があるのです。

これは大きな矛盾ですよね。
「戦争を防ぐために核を持とう」と思ったのに、「核を持とうとしているから攻撃する」と言われてしまうわけです。

核兵器って、本当に必要?

ここまで見てきたように、核兵器には「戦争を防ぐ力」がある一方で、「戦争を招くリスク」もあることが分かりました。

さらに、核兵器は使えば大量の人が死に、地球環境にも大きな被害をもたらします。
実際、世界の多くの国では「核兵器は人道に反する」として、持つことも使うこともやめようという動きが広がっています。

日本は、唯一の被爆国として「核兵器を持たない、作らない、持ち込ませない(非核三原則)」を守ってきました。
その一方で、アメリカの「核の傘」によって安全保障を維持してきました。

これからの世界では、戦争を止める手段として核兵器に頼るのか、それとも対話や国際的なルール作りによって平和を守る道を選ぶのか、慎重に話し合っていくことが必要です。

主な参考文献

  • Brodie, B. (1946). The Absolute Weapon: Atomic Power and World Order. New York: Harcourt, Brace.
  • Waltz, K. N., & Sagan, S. D. (2012). The Spread of Nuclear Weapons: A Debate. W. W. Norton & Company.
  • Ganguly, S., & Hagerty, D. T. (2005). Fearful Symmetry: India-Pakistan Crises in the Shadow of Nuclear Weapons. University of Washington Press.
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ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。平和と紛争について中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、少しでも争いのない世界になればいいな、と思っています。 At Eternal Peace Lab, we aspire to contribute to a world without conflict by providing accessible content about peace for both students and adults.
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