どうして核兵器をなくすことができないの?

みなさんは、「核兵器なんていう危ないものをどうしてなくすことができないの?」と思ったことはありませんか?
実際の世界では核兵器をなくすことはとても難しいのが現実です。
いまでも世界には約1万2000発の核兵器が存在し、それを持っている国はどれも「手放せない」と言っています。
今回は、「なぜ核兵器はなくすことができないのか?」について、わかりやすく説明していきます。
核兵器ってどういうもの?
核兵器は、原子の力を使って大きな爆発を引き起こす、とても破壊力の強い兵器です。
1945年に広島と長崎に落とされた原爆は、1発で何万人もの命を奪いました。
今ある核兵器は、当時の原爆よりももっと強力です。しかも、それを使うと、人間だけでなく地球全体に長く被害が残ると考えられています。
核兵器をなくそうとする動きもある
もちろん、「こんな危ないもの、世界からなくそう」という動きもあります。
世界には核兵器禁止条約(TPNW)という条約もあります。これは、核兵器を作ることも使うことも全部禁止しよう、という国際ルールです。
日本をふくむ多くの国は「核兵器をなくすべきだ」とは言っています。
でも――なぜか、核兵器はなくなりません。
その理由を、いくつかのポイントに分けて説明します。
理由①「核兵器は安全を守る最後の手段」だと思っている
まず1つ目の理由は、核兵器を持っている国は「これがないと自分の国が守れない」と思っていることです。
たとえばアメリカ、ロシア、中国などの大国は、他の国に攻められそうになったときに「核兵器で反撃するぞ」と言えば、相手が攻撃をやめると信じています。
これを「核抑止(かくよくし)」といいます。
さらに、アメリカは日本や韓国などにも「アメリカの核で守ってあげるよ」と約束しています。これを「核の傘(かさ)」といいます。
つまり、「核兵器は戦争を防ぐために必要だ」と考えている国が多いのです。だから簡単には手放せないのです。
理由②「核兵器を持ってる国だけが特別扱いされている」
核兵器をなくす話になると、よく出てくるのが「NPT(核不拡散条約)」という国際ルールです。
これは、「核兵器をこれ以上増やさないようにしよう」という約束です。
でも実は、このルールには大きな矛盾があります。
● アメリカ・ロシア・中国・イギリス・フランスの5か国は、「持ってもいい」ことになっている
● それ以外の国は、「持ってはいけない」
これって、ちょっと不公平ですよね?
だからインドやパキスタン、イスラエルのように、「自分たちも核兵器を持たなければ危ない」と思って持つ国も出てきてしまったのです。
理由③「敵を信用できないから手放せない」
国どうしの関係は、残念ながらいつも仲良しというわけではありません。
「もし、相手がこっそり武器を増やしていたらどうしよう…」
「もし、自分だけが核兵器をなくして、相手が残していたら、負けてしまう…」
そんなふうにお互いに疑ってしまう気持ちを「安全保障のジレンマ」といいます。
この気持ちがあるから、どの国も「自分だけ先に核兵器をなくすのは危険だ」と考えてしまうのです。
理由④「核兵器にはお金と仕事がかかっている」
核兵器を作ったり、管理したりするにはとてもたくさんのお金と技術が必要です。
それを作っている工場や研究所では、たくさんの人が働いています。
つまり、核兵器をやめると、仕事や経済にも影響が出てしまうのです。
また、核兵器を持っていることが「大国の証」と思っている国もあります。
「核兵器をなくしたら、世界での立場が下がってしまう」と考える国もあるのです。
核兵器禁止条約は意味がないの?
では、核兵器禁止条約(TPNW)には意味がないのでしょうか?
実はそうでもありません。
この条約に入っているのは、核兵器を持っていない国がほとんどです。
だから今のところ、核兵器を実際に減らす力はあまりありません。
でも、この条約は「核兵器はダメなもの」という世界のルール(規範)を作る大きな一歩になります。
それが、将来、核兵器をなくすための力になるかもしれません。
これからどうすればいいの?
核兵器をなくすには、たくさんの問題を乗りこえなければなりません。
・国どうしの信頼関係を作る
・武器に頼らない安全保障の方法を考える
こういったことを少しずつ進めていく必要があります。
すぐには難しいかもしれません。でも、「核兵器はいらない」と思う人が増えれば、世界は変わっていくかもしれません。
まとめ
核兵器は、たしかにとても危険で、人類にとって大きなリスクです。
それでもなくならないのは、安全のため・力の象徴・国際政治のしくみ・お金や経済の問題など、いろいろな理由がからんでいるからです。
だからこそ、私たちは「なぜなくならないのか?」をしっかり考え、そして「どうしたらなくせるか?」をみんなで話し合っていくことが大切です。
主な参考文献
- Carnegie Endowment for International Peace. (2024). Rethinking a Political Approach to Nuclear Abolition.
- Ministry of Foreign Affairs of Japan. (2025). 記者会見発言(令和7年2月).
- SIPRI. (2025). SIPRI Yearbook 2025: Armaments, Disarmament and International Security.
- Nuclear Weapons Ban Monitor. (2024). The status and implementation of the TPNW.
- United Nations Office for Disarmament Affairs. (2023). Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT).