「右」とか「左」ってなに? 大切なのは自分の頭で考えていくこと

「この人は右よりだ」「あの人は左よりだ」っていう言葉、SNSやネットニュースの掲示板などよく聞きますよね。
みんなそれぞれのイメージをなんとなくは持っているかもしれませんが、実は「右」や「左」という言葉には深い歴史と、さまざまな意味があります。
今回は、「右(右翼)」と「左(左翼)」っていったい何なのか、どんな考え方があるのか、そしてどう向き合うべきかを、やさしく解説していきます。
「右」と「左」はどこからきたの?
「右」と「左」の始まりは、18世紀のフランス革命までさかのぼります。
革命後のフランスで開かれた議会では、国王の権力を残したい人たちが議長から見て右側、もっと民主的な改革を進めたい人たちが左側に座ったことから、保守的な立場を「右」、革新的な立場を「左」と呼ぶようになったのです。
この「座る場所」にすぎなかった言葉が、やがて世界中の政治で使われるようになり、今では政治的な立場や価値観を表す言葉として定着しています。
「右(右翼)」ってどんな考え方?
右(右翼)とされる人たちは、伝統や秩序、国の安定や経済の自由を大切にする考えを持っています。
たとえばこんな考え方が、右寄りだとされます。
- 長く続いてきた文化や道徳を守りたい
- 社会のルールや秩序を大事にしたい
- 税金を抑えて、民間(企業や個人)の自由な活動を重視したい
- 国を守る力(軍事や治安)をしっかり整えたい
- 国民のアイデンティティや誇り(愛国心)を大事にしたい
つまり、「今あるものをなるべく壊さず、守っていこう」というスタンスです。変化よりも安定や伝統を優先するイメージですね。
ただし、右といってもいろいろな立場があり、バランスを重んじる穏やかな右派もいれば、外国人や他の文化を排除するような極端な右派(極右)も存在します。
歴史上では、ナチス・ドイツやファシズム(イタリア)などが極右の代表例とされており、「国家のために個人の自由を制限してもいい」と考えるような強い国家主義、排外主義、独裁的な要素が特徴です。
「左(左翼)」ってどんな考え方?
一方、左(左翼)とされる人たちは、みんなが平等に生きられる社会や、差別のない社会をつくることを目指す考え方を持っています。
たとえば、こんな意見が左寄りです。
- お金持ちと貧しい人の差をできるだけ小さくしたい
- だれでも医療や教育を受けられるように、福祉を充実させたい
- 少数派(LGBT、移民、障がいのある人など)の権利を守りたい
- 環境問題や気候変動に積極的に取り組みたい
- 政府がもっと社会に関わって、公平なルールをつくってほしい
左派の人たちは、「社会は今のままでは不公平だ」と考え、変化や改革を積極的に求めることが多いです。政治でいうところの「進歩派」や「改革派」と呼ばれることもあります。
こちらも、ゆるやかな左派(社会民主主義など)から、資本主義そのものを否定するような急進的な極左(共産主義や無政府主義など)まで、幅広い立場があります。
「右と左」はグラデーションのようなもの
ここまで読むと、「自分は右寄りかな?」でも「左派の考えにも共感するところがあるかな」と思うかもしれません。実はそれ、とても自然なことです。
多くの人は、すべての考え方が「右」か「左」かにキレイに分けられるわけではありません。
たとえば、
- 経済的には「自由競争がいい」と思っているけど(右寄り)
- 社会的には「多様性を大事にしたい」と考えている(左寄り)
こんな人はとても多いです。
つまり、政治的な立場は白と黒のようにはっきり分かれているのではなく、「右→中道→左」というグラデーションのように連続しているのです。
「極右」「右派」「中道」「左派」「極左」というように、強さや方向性によってたくさんの立場があるんです。
「右」「左」で決めつけてはいけない理由
ニュースやSNSでは、「あの人は左だから信用できない」「右寄りだから過激だ」などといった言葉が飛び交うこともあります。でも、人の考えを「右」か「左」だけで決めつけてしまうのは、とても危険です。
なぜなら、
- 同じ「右派」でも人によって意見はバラバラ
- 問題によっては右寄り、左寄りの考えが混ざる人も多い
- ラベルを貼ることで、冷静な話し合いができなくなってしまう
といったことが起きるからです。
たとえば、税金の使い方については「右寄り」、教育については「左寄り」な意見を持っている人もいます。そんな人を「右」「左」と決めつけてしまうと、本当の意見や思いが見えなくなってしまいます。
また、「自分は右」「あいつは左」と決めてしまうことで、お互いの意見を理解しようとしなくなってしまいます。これでは、社会全体が分断されてしまいますよね。
大切なのは、「右」「左」のラベルではなく「中身」です。
「どっち寄りか」よりも、「どんな考えに、なぜ賛成・反対しているのか?」をテーマごとに、丁寧に見ていくことが大切です。
おわりに
「右(右翼)」と「左(左翼)」という言葉は、もともとはフランス革命のときの議会での席順から生まれたものでした。今では、政治の考え方のちがいを表す言葉として広く使われています。
右は伝統や秩序、自由な経済活動を大事にし、左は平等や改革、社会的な弱者の支援を重視します。でもほとんどの人は、どちらか一方に完全に当てはまるわけではなく、テーマごとにさまざまな意見を持っています。
だからこそ、「あの人は右だ」「左だから信用できない」と決めつけるのではなく、ひとつひとつの意見をしっかり聞いて、自分の頭で考えていくことがとても大切です。
「右か左か」ではなく、「どんな社会にしたいか?」を一緒に考えていきたいですね。
主な参考文献
Bobbio, N. (1996). Left and Right: The Significance of a Political Distinction (A. Cameron, Trans.). University of Chicago Press.
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