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ポピュリストってどんな人? 分断を煽る手法に気をつけよう

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みなさん、「ポピュリズム」や「ポピュリスト」という言葉を聞いたことはありますか。
ニュースやSNSで、「自分こそが国民の本当の声を代弁している」と胸を張って、政治やマスコミを強く批判する人を見かけたことはないでしょうか。

こうした人たちの中には、「よく言ってくれた!」と思えるような発言をする人もいます。しかし、その言葉の裏には、社会を真っ二つに分け、仲間同士を争わせてしまう危険も隠れています。この記事では、ポピュリストがどのような人なのか、どのように人の心を動かすのか、そしてその言い方がどのように分断を生み出すのかを、わかりやすく説明します。

ポピュリズムとは何か

ポピュリズムとは、簡単にいうと「社会を“善良な国民”と“腐敗したエリート”に分け、政治は国民の意思だけを聞くべきだ」という考え方です。
この考え方は右寄りの政治家にも左寄りの政治家にも存在し、政策の細かい内容は違っても、「国民 vs エリート」という構図は共通しています。

もともとは19世紀のアメリカやロシアの運動が始まりです。最近では、イギリスのEU離脱(ブレグジット)やアメリカのトランプ政権が用いている手法などが、その代表的な例としてよく挙げられます。

ポピュリストの行動や話し方

ポピュリストの政治家は、「既存の政治やエリートは国民を裏切っている」というメッセージを繰り返します。そして、自分を「本物の国民の代表」としてアピールします。複雑な制度改革よりも、「この壁を作れば問題解決」や「これさえやればすべて良くなる」といった、わかりやすく即効性のある話を好みます。

話し方も特徴的で、常に「善い国民」と「悪いエリート」を対立させます。短く覚えやすいスローガンを使ったり、わざと失礼な発言をして注目を集めたりすることもあります。「このままでは国が終わる」というように、危機感を高める言葉もよく使います。

人の心をつかむ仕組み

ポピュリストは、人々の不安や不満をうまくつかんで、それを「怒り」に変えていきます。例えば、「自分たちは置き去りにされている」という気持ちを、「敵があなたの生活を奪っている」という物語に置き換えます。怒りや不安、誇りや懐かしさといった感情を刺激して、「自分たちは一緒に戦っている」という仲間意識を作り出します。

煽りの手法

現代のポピュリストはSNSも上手に使います。過激な発言をすればニュースに取り上げられやすくなり、注目が集まります。さらに、批判的な報道を「フェイクニュース」と呼び、支持者に「メディアは信用できない」と思わせます。

SNSでは仲間同士がつながり、同じ意見を強化し合う「エコーチェンバー」という状態が生まれます。そうなると、間違った情報や陰謀論があっという間に広まります。

また、ポピュリストは複雑な社会の問題を「悪い他者が善良な庶民を苦しめている」という単純な物語に変えます。例えば、経済の不調を「国際的なお金持ちのせい」、治安の悪化を「移民のせい」と決めつけます。

分断が生まれるとどうなるのか

こうした語り方は、社会を「味方」と「敵」に分けてしまいます。相手を悪と決めつけたら、もう話し合う気持ちは起きません。その結果、政治で妥協や合意ができなくなり、民主主義がうまく機能しなくなります。

さらに、司法やメディアなど民主主義を守る制度も「敵だ」と攻撃され、弱まってしまいます。多数派の意見だけが押し通される危険もあります。

また、事実よりも「感情的に気持ちいい話」が優先されると、社会全体で共有できる現実が失われ、合意をつくるための土台がなくなってしまいます。

見分けるためのポイント

ポピュリストかどうかを見極めるには、その人の話をよく聞くことが大切です。いつも「善い国民」と「悪いエリート」の対立で語っていないか。自分以外の政治勢力を全否定していないか。反対意見や事実の確認を嫌っていないか。問題の解決策を極端に単純化していないか。常に危機をあおっていないか。特定の集団を一方的に悪者にしていないか。こうしたポイントがいくつも当てはまる場合は、注意する必要があります。

分断を防ぐためにできること

もし誰かの発言に強い怒りや恐怖を感じたら、すぐに信じるのではなく、複数の信頼できる情報源で確かめることが大切です。相手の人格を否定するのではなく、主張の根拠を調べ、事実やデータをもとに話す方が冷静な議論につながります。意見が違っても、相手の中にある本当の不安や関心を探り、共通点から話を進めると、分断を乗り越えるきっかけになります。

おわりに

ポピュリストは、複雑な問題をシンプルにして、感情に直接響く魅力を持っています。しかし、その「わかりやすさ」が社会を分断する力にもなってしまうことを忘れてはいけません。強い言葉に出会ったときは、一歩引いて背景や根拠を確かめる姿勢が大切です。派手なメッセージよりも、時間をかけた合意や多様な意見の共存こそが、私たちの社会と自由を守るカギになるのです。

主な参考文献

  • Galston, W. A. (2018). The populist challenge to liberal democracy. Journal of Democracy, 29(2).
  • Obradović, S., Power, S. A., & Sheehy-Skeffington, J. (2020). Understanding the psychological appeal of populism. Current Opinion in Psychology, 35.
  • de Jonge, L. (2017). First Brexit and now Trump: What is populism and how might we view it? University of Cambridge Research.
  • Gessler, T. (2016). Book review: What is Populism? by Jan-Werner Müller. LSE Review of Books.
  • Mudde, C. (2018, November 22). How populism became the concept that defines our age. The Guardian.
ABOUT ME
ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。平和と紛争について中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、少しでも争いのない世界になればいいな、と思っています。 At Eternal Peace Lab, we aspire to contribute to a world without conflict by providing accessible content about peace for both students and adults.
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