戦争はどうしたら終わるの? 戦争が終わる理由や条件を理解しよう

「戦争ってどうして始まるんだろう?」という疑問はよく聞きますが、「戦争はどうやって終わるの?」という問いは、あまり考えたことがない人も多いかもしれません。
実は、戦争を終わらせるのは、始めるよりもずっと難しいことなんです。戦争が始まると、どちらも「負けたくない」「引き下がれない」という気持ちが強くなるため、なかなか話し合いで終わることができません。
でも、実際に過去の多くの戦争は、さまざまな理由や条件のもとで終わってきました。この記事では、戦争が終わる主な理由や、実際にどんな形で終結するのか、そしてそれを支える条件やしくみについて、具体的な例をあげながらわかりやすく紹介します。
戦争が終わる主な「理由」
① もう続けても勝てないと判断したとき
戦争には大きなお金や兵士の命がかかっています。戦いが長引くと、武器も食料も足りなくなり、兵士も国民も疲れ切ってしまいます。そうなると「もう勝てない」「これ以上はムリだ」と判断して、戦争を終わらせようとする動きが出てきます。
たとえば、第一次世界大戦では、ドイツなどが物資不足や国民の疲弊により、戦いを続けられなくなり、最終的に降伏しました。
② 国のトップ(指導者)が交代したとき
戦争を続けるかどうかを決めるのは、たいてい国のリーダーです。そのリーダーが交代すると、新しい人が「この戦争はやめよう」と決断することがあります。
例えば、1982年のフォークランド戦争では、敗戦したアルゼンチンの軍事政権が崩れ、民間の新しい政府ができて戦争が終わりました。
③ 戦争の目的が達成されたとき
戦争には「こうしたい!」という目的があります。もしその目的が早い段階で達成されたら、「これ以上戦う意味がない」と判断して戦争が終わることもあります。
1991年の湾岸戦争では、イラクがクウェートを占領したことに対して、多国籍軍(アメリカなど)がクウェートを取り返すことに成功し、その時点で戦争は終了しました。
④ 他の国から「やめなさい」と言われたとき
強い国や国連などの国際機関が、「この戦争はまずい」と判断して、戦っている国々に停戦を求めることがあります。その圧力が強ければ、当事国も戦争をやめることがあります。
2008年のロシアとジョージアの戦争では、フランスが仲介して停戦合意が成立し、戦闘が数日で終わりました。
⑤ 国際社会の批判が強くなったとき
最近ではSNSやメディアで世界中の人が戦争について知ることができます。すると、「この国はひどいことをしている!」という国際的な批判が高まり、それを気にした国が戦争をやめることもあります。
戦争が終わる「条件」って何?
戦争を終わらせるには、ただ「もうやめよう」と言うだけではダメです。きちんとしたルールや合意が必要です。ここでは、戦争を終わらせるときに使われる主な方法を紹介します。
① 講和条約(こうわじょうやく)
これは、戦争していた国同士が「もう戦いません」と書類にサインして、正式に終戦するやり方です。領土のことや賠償金(ばいしょうきん)のことなど、細かい条件も話し合って決めます。
例:第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約(1919年)
② 降伏(こうふく)
どちらかが完全に負けを認めて、戦争を終わらせる方法です。相手の条件を飲まないといけないので、厳しい結果になることが多いです。
例:第二次世界大戦の日本とドイツの降伏
③ 停戦協定(ていせんきょうてい)
一時的に戦闘を止めるための約束です。まだ講和条約を結んでいない場合に使われます。形のうえでは「まだ戦争状態」のままのこともあります。
例:1953年の朝鮮戦争の休戦協定
④ 第三国や国際機関の介入(かいにゅう)
戦っている国の間に、他の国や国連などが入り込んで仲介し、戦争をやめさせることもあります。
例:湾岸戦争のときの国連決議と停戦条件
⑤ 経済制裁(けいざいせいさい)
戦争をしている国に対して、貿易を止めたり、お金の流れを止めたりして、経済的に苦しくさせる方法です。それによって「戦争を続けられない」と感じて終わることがあります。
実際の戦争の終わり方【3つの例】
① 湾岸戦争(1990~1991年)
イラクがクウェートを攻めたことから始まった戦争。アメリカなどの多国籍軍がイラク軍を撃退し、クウェートを取り戻しました。その後、国連の停戦決議が採択され、戦争は終了。
- 終わり方: イラクが実質的に降伏し、停戦を受け入れた
- 理由: 軍事的に圧倒された、国際社会の一致した圧力
② イラク戦争(2003~2011年)
アメリカがイラクに「大量破壊兵器がある」として始めた戦争。フセイン政権は崩壊したものの、その後も内戦のような状態が続きました。最終的にはアメリカの国内世論や経済負担もあり、2011年に米軍が完全撤退しました。
- 終わり方: アメリカとイラクの協定で撤退
- 理由: アメリカの政治的判断(世論・選挙・コスト)
③ ロシア・ジョージア戦争(2008年)
ジョージア(グルジア)が国内の分離独立を止めようとして南オセチアに攻撃し、それを支援する形でロシアが介入。短期間でロシアが軍事的に勝ち、EU(ヨーロッパ連合)の仲介で停戦合意が結ばれました。
- 終わり方: EUの仲介による停戦合意
- 理由: 軍事的決着+外交による圧力
まとめ:戦争を終わらせるにはどうすればいいの?
戦争が終わる理由や条件を見てきましたが、ひとつ言えるのは「戦争は自然には終わらない」ということです。多くの犠牲を出したうえで、「もう続けても意味がない」とどちらか、または両方が判断したとき、ようやく終わりに向かいます。
そのためには、以下のような力が必要です:
- 国のリーダーの決断
- 国民の声(世論)
- 国際社会の働きかけ(国連や他国の介入)
- 戦争以外の選択肢(交渉や妥協)
戦争を防ぐためにも、そして早く終わらせるためにも、「なぜ戦争は終わるのか?」を知っておくことはとても大切な第一歩です。
主な参考文献
- 塩倉, 裕. (2022). 戦争を終わらせるのはなぜ難しいのか:政治学者が見いだしたジレンマ. 朝日新聞デジタル.
- Tuck, C. (2015). 戦争終結に関する理論的視座. In 平成27年度 戦争史研究国際フォーラム報告書 (pp. 113–126). 防衛省防衛研究所.
- 外務省. (1991). 湾岸危機の発生と収束. In 外交青書 1991 (第2章 第1節).
- United Nations Security Council. (1991). Resolution 687 (1991) [Iraq – Ceasefire].
- Reuters. (2011, December 19). 米軍最後の部隊がイラク撤退完了、約9年にわたる戦争終結. ロイター通信.