人はなぜ争うの? 戦争でお金儲けをする人たちがいる

「戦争って、なんで起きるんだろう?」
こんな疑問をもったことがある人は多いと思います。もちろん、戦争にはいろんな理由があります。国同士の対立や、宗教や民族の争い、土地や資源をめぐるもめごとなど、原因はさまざまです。
でも、実はもうひとつ大きな理由があります。それは「戦争によってお金をもうける人たちがいる」ということです。
今回は、そんな「戦争ビジネス」の話をわかりやすく紹介します。
武器を売ってもうける人たち
私たちが普段生活している社会には、「武器をつくって売る会社」があります。これを「軍需産業(ぐんじゅさんぎょう)」といいます。戦争で使う銃やミサイル、戦車や飛行機などをつくっている会社です。
たとえばアメリカには、ロッキード・マーティン、レイセオン、ボーイングなど、世界でもトップクラスの軍需企業がいくつもあります。これらの会社は、アメリカ政府に兵器を売るだけでなく、他の国にも輸出してもうけています。
実際に、世界中で兵器を売っている国の1位はアメリカです。そしてその兵器を買っている国は、日本を含めてたくさんあります。
戦争があると、武器がたくさん必要になります。だから、戦争が起きると武器会社は売上が増えて、もうかります。つまり、「戦争が起きると、得をする会社や人がいる」のです。
ロシアの銃は世界中に広がっている
「AK-47(エーケーよんじゅうなな)」という名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。これはロシアでつくられた自動小銃で、「カラシニコフ銃」とも呼ばれます。とても丈夫で壊れにくく、使い方もかんたんなため、世界中で使われています。
今では、アジアやアフリカ、中東などの紛争地域(戦争や内戦が起きている場所)で、この銃がふつうに使われています。テロリストや少年兵も使っていることが多く、問題になっています。
ロシアだけでなく、中国や他の国でもコピーされていて、値段もとても安いです。なんと、アフリカでは1丁(いっちょう)100ドル以下で売られていることもあるそうです。
つまり、世界中で簡単に手に入る「安くて強い武器」があることで、争いが終わらず、逆に広がってしまうのです。
民間の戦争ビジネス「PMC」
みなさんは「民間軍事会社(PMC)」という言葉を聞いたことがありますか?
PMCとは、ふつうの会社のように見えて、実は戦争で「兵士のかわりに戦う人」や「警備をする人」を送る会社のことです。たとえば、アメリカの「ブラックウォーター社」、ロシアの「ワグネル・グループ」などが有名です。
これらの会社は、お金をもらって、外国の戦争に人を送りこみます。たとえば、兵士を守ったり、施設を警備したり、ときには戦闘に加わることもあります。
正規の軍隊(国の兵士)とちがって、PMCは「民間人」なので、国際的なルール(戦争のルール)を守らないこともあり、問題になっています。
でも、こうした会社は、戦争が長引くほど仕事がふえるため、「戦争でお金をもうける」ことができるのです。
アメリカの「軍産複合体」って?
アメリカには「軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)」という言葉があります。これは、「軍(軍隊)」「政府」「軍需企業」が手を組んで、一緒に動いているという意味です。
たとえば、政府が「戦争が必要だ」と決めれば、軍は兵器を買い、軍需企業はそれを売ってもうけます。そして、その会社は政治家にお金を寄付して、また戦争がしやすくなるように働きかける――。こうした仕組みができあがっているのです。
元アメリカ大統領のアイゼンハワーは、1961年に「軍産複合体が政治を動かしてしまうことを心配している」と警告しました。実際に、アメリカでは戦争を通して特定の会社が何十億円ももうけたことがあります。
「ナイラ証言」―戦争のためのウソ
1991年の湾岸戦争の前、アメリカである少女がこんな証言をしました。
「私はクウェートの病院で、イラク兵が赤ちゃんを保育器から出して殺すのを見ました。」
この証言はテレビで大きく報道され、アメリカの国民は「イラクはひどい国だ」と怒りました。これが戦争への支持を高め、アメリカはイラクに攻撃することになります。
でも、後になってわかったことがあります。実はこの少女は、クウェートの大使の娘で、証言は広告代理店が用意した「やらせ」だったのです。
この事件は「ナイラ証言」と呼ばれ、戦争のために人々の感情をあおる「プロパガンダ(情報操作)」の例として有名になりました。
戦争を止めるために
ここまで読んでみて、どう感じましたか?
「戦争は悪いこと」と思っていても、その戦争でお金をもうける人たちがいるという現実があります。だからこそ、戦争はなかなかなくならないのです。
でも、私たち一人ひとりが、こうした仕組みを知ることで、「だまされない目」を持つことができます。そして、「戦争が必要だ」と言われたとき、それが本当に正しいのか、自分の頭で考えることができるようになります。
戦争で得をするのは、いつも一部の人たちだけです。犠牲になるのは、ふつうの人たち、あなたや私のような市民です。
だからこそ、平和のためにできること―まずは「知ること」から、はじめてみませんか?