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どうしてわたしはいつまでも幸せになれないの? 自分の素直な心と向き合おう

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「もっと勉強ができたら…」
「もっと可愛かったら…」
「もっとお金があったら…」

そんなふうに、「もっと〇〇だったら幸せなのに」と思ったことはありませんか?
でも、たとえその「もっと〇〇」を手に入れても、なぜか心の中が満たされない。
そんな気持ちになったこと、きっと誰でもあるはずです。

今回は、「どうして人は、いつまでも幸せになれないのか?」という問いについて、心理学や仏教などの知恵を参考にしながら、一緒に考えてみましょう。
そして最後には、「本当の幸せ」へのヒントをお届けします。

幸せになりたいのに、なぜかいつも満たされない理由

私たち人間は、生まれたときから「何かを欲しがる」存在です。
たとえば、小さな子どもはおもちゃを欲しがり、それを手に入れたと思ったら、次はもっと新しいものを欲しがります。
大人になってもそれは変わりません。成績や見た目、友人関係、恋愛、SNSの「いいね」など…欲しいものはどんどん増えていきます。

でも心理学の研究によると、人はどんなに欲しいものを手に入れても、すぐにその喜びには慣れてしまい、「もっと、もっと」と次の欲望を追いかけてしまうそうです。
この現象は「快楽順応(かいらくじゅんのう)」と呼ばれています。

たとえば、憧れのブランドのバッグを買ったときは嬉しい。でも数週間たつと、「もっと高いバッグが欲しい」と感じてしまう。
これが人間の心のクセなんです。

仏教が教えてくれること:「欲望には終わりがない」

このような人間の性質について、昔から深く考えてきたのが仏教です。
仏教では、人が苦しむ原因の一つは「渇愛(かつあい)」、つまり「もっと欲しい」という心だと考えられています。

たとえば、お釈迦さま(仏教の開祖)はこう言いました。

「渇愛から苦しみが生まれる。渇愛から恐れが生まれる。渇愛を手放した者には、苦しみも恐れもない」

つまり、私たちが「もっと〇〇だったら…」と求め続けるかぎり、心が穏やかになることはないのです。
でも反対に、その「もっと欲しい」という心を静かに見つめ、「今あるもので足りている」と気づけたとき、心はずっと楽になります。

「嫉妬」や「妬み」があなたを苦しめる

もうひとつ、幸せを感じられない大きな原因があります。
それは「他の人と自分を比べてしまう」ことです。

たとえば、SNSで友達がキラキラした写真を投稿しているのを見ると、「なんで自分だけこんなにダメなんだろう…」と落ち込んだり、うらやましくなったりしますよね。
この気持ちは「嫉妬」や「妬み」と呼ばれます。

心理学では、「人は他の人と比べて自分の価値をはかろうとする」という性質があると考えられています。これを「社会的比較」といいます。

でも、どれだけ頑張っても、世界には自分よりもすごい人が必ずいます。
比べることで「自分はダメだ」と思ってしまうと、どんどん自己肯定感が下がってしまい、幸せを感じにくくなってしまうんです。

じゃあ、どうしたら本当に幸せになれるの?

ここまで読んで、「人間って面倒くさいな」と思ったかもしれません。
でも大切なのは、「自分の中にある、欲望や嫉妬の気持ちを否定しないこと」です。

「もっと欲しい」
「うらやましい」
「悔しい」

そう思ってしまうのは、悪いことではありません。
それは人間なら誰でも持っている、ごく自然な気持ちだからです。
また、その気持ちを糧にして成長していくこともできます。

問題なのは、その気持ちにフタをしたり、見て見ぬふりをしたりすること。
そうすると、心の中にどんどん「もやもや」がたまっていき、つらくなってしまいます。
その結果、他の人にその不満をぶつけることで人間関係が悪化し、さらに幸せが遠ざかる悪循環に陥ってしまいます。

素直な気持ちに気づき、向き合い、受け入れる

本当の意味で幸せになるためには、自分の心とちゃんと向き合うことが大切です。
「今の自分は、本当はどんな気持ちなんだろう?」
「なんでこんなにモヤモヤするんだろう?」
そんなふうに、自分に問いかけてみる時間を持ってみてください。

最近では「マインドフルネス」といって、深呼吸をしながら自分の気持ちをゆっくり観察する方法も注目されています。
また、仏教で大切にされている「慈しみ」の気持ちや、「自分にも他人にもやさしくすること」も、心を穏やかにしてくれます。

そして、「うらやましい」「悔しい」と感じたら、その気持ちを「自分もこんなふうになりたいって思ってるんだな」と、やさしく受け止めてあげましょう。

おわりに:幸せは、あなたの心の中にある

「幸せになりたい」
その気持ちは、誰の心にもある大切な願いです。

でも、ずっと満たされないままでいるのは、もしかしたら「本当の自分の気持ち」とちゃんと向き合えていないからかもしれません。

もっと何かが欲しい。
誰かに負けたくない。
認められたい。
うらやましい。
悔しい。

そんな「素直な心」に気づき、誰かや自分を責めるのではなく、やさしく受け入れてあげること。
それが、あなた自身を大切にするということです。

そして、その心の奥にある「ほんとうの願い」に気づいたとき、きっとあなたは、本当に幸せになるための第一歩を踏み出せるようになるはずです。

主な参考文献

  1. Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human Relations, 7(2), 117–140.
  2. Krasonova, A., et al. (2015). Does Malicious Envy of E-WOM Receivers Towards Senders Result in Avoidance of the Recommended Product? Journal of Marketing Studies, 38(2), 41–55.
  3. Schopenhauer, A. (n.d.). Happiness is a State of Semi-Satisfaction. Aeon Essays.
  4. Takahashi, H., et al. (2009). When your gain is my pain and your pain is my gain: Neural correlates of envy and schadenfreude. Science, 323(5916), 937–939.
  5. Frontiers in Psychology. (2023). Help others—be happy? The effect of altruistic behavior on happiness across cultures. Frontiers in Psychology, 14, 1156661.
ABOUT ME
ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。平和と紛争について中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、少しでも争いのない世界になればいいな、と思っています。 At Eternal Peace Lab, we aspire to contribute to a world without conflict by providing accessible content about peace for both students and adults.
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