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どうして罪悪感を感じるの? 罪悪感の克服方法

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「なんであんなこと言っちゃったんだろう……」
「あの時、もっとちゃんとしていれば……」

こんなふうに、過去の自分の行動を思い出して後悔し、胸がズーンと重くなることはありませんか?
それは「罪悪感」という感情です。今回は、この罪悪感がどこから来るのか、そしてどう向き合えば少しでも楽になれるのかを、わかりやすく解説します。

罪悪感って、どんな感情?

罪悪感とは、「自分の行動が誰かを傷つけたかもしれない」と感じて、自分を責めてしまう気持ちのことです。たとえば友達にひどいことを言ってしまったり、大切な約束を忘れてしまったりしたとき、「ああ、なんてことをしてしまったんだ」と思ってしまう、あの感じです。

この感情は、単に「悲しい」とか「落ち込む」といった感情とはちょっと違います。罪悪感は、「自分は悪いことをした」と自分で自分を責めるところが特徴です。

でも、罪悪感は悪いものばかりではありません。実は、私たちが社会の中でうまく生きていくためにとても大事な感情でもあるのです。

どうして罪悪感を感じるの?

罪悪感は、私たちが人間関係を大切にしたいと感じる心から生まれます。

たとえば、もしあなたが何か失敗をして、相手に謝ったとします。謝るときに「ごめんね。あんなこと言うべきじゃなかった」と言うのは、相手を思いやっている証拠ですよね。
罪悪感は、「もっとよい人間でありたい」「相手と仲良くしたい」という気持ちのあらわれでもあるのです。

また、心理学の研究では、罪悪感は「自分の行動が、正しいことから外れてしまった」と感じたときに起きる感情とされています。これは人間だけが持つ、「他人の気持ちを考えられる力(共感)」や、「良心」によって生まれるものです。

進化の観点から見ると、罪悪感は集団の中でうまくやっていくために役立つ感情とも言われています。つまり、私たちが他人に優しくできたり、ルールを守ったりできるのは、罪悪感のおかげでもあるのです。

罪悪感が強すぎるとどうなる?

罪悪感をある程度感じるのは自然なことです。でも、強すぎたり、ずっと引きずったりすると、心がとても苦しくなってしまいます。

たとえば、

  • 「自分なんてダメな人間だ」と思い込んでしまう
  • 人を避けるようになる
  • 何をしても楽しめなくなる
  • 過去のことを何度も思い出して苦しくなる

といった状態になってしまうことがあります。

こんなときは、罪悪感をうまく「手放す」ことが大切になります。

罪悪感を克服する方法

それでは、どうすれば罪悪感から少しでも自由になれるのでしょうか?
ここでは心理学や心のケアの方法から、日常でできる対処法をいくつかご紹介します。

① 「自分だけが悪い」と思い込まない

罪悪感を感じているとき、多くの人が「全部自分が悪かった」と考えがちです。でも、物事にはたいていいろんな要因があります。

たとえば、友達とのトラブルがあったとき、自分の言葉だけでなく、相手の受け取り方やそのときの状況も影響しています。

心理学ではこれを「責任パイチャート」といって、円グラフにしてどのくらいの割合で自分が悪かったのか、他の人や状況にも原因があったのかを視覚化する方法もあります。

② 今の自分にできることに目を向ける

過去を何度も悔やんでも、時間は戻せません。でも、「これからどうするか」は、自分の力で変えることができます。

たとえば、

  • 相手に謝る
  • 同じことを繰り返さないように気をつける
  • 誰かに相談してみる

こうした行動を通じて、罪悪感を少しずつ癒やすことができます。

③ マインドフルネスで「今ここ」に意識を戻す

「マインドフルネス」とは、今の自分の気持ちや体の状態にただ気づく練習のことです。呼吸に意識を向けて、過去の後悔や未来の不安から少し距離を取ることができます。

たとえば、静かな場所で目を閉じて「息を吸っている、吐いている」と呼吸にだけ集中してみましょう。それを3分だけでも続けることで、心がスーッと落ち着いてくることがあります。

④ 自分を責める代わりに、やさしく声をかけよう

罪悪感を感じているとき、「なんて自分はダメなんだ」と自分を責めがちです。でも、それでは心がますますつらくなってしまいます。

そんなときは、「誰だって間違いはあるよ」「自分は精一杯やってたんだ」と、自分にやさしく声をかけてあげることが大切です。

これは「セルフ・コンパッション(自己への思いやり)」と呼ばれる考え方で、落ち込んだ心を立ち直らせるための力になります。

⑤ 自分を「許す」ことを学ぶ

最後にとても大切なのが、「自分を許す」ことです。

仏教では、人は誰でも過ちを犯すものであり、大事なのはその過ちに気づき、次にどう生きるかだとされています。

「もう同じ失敗はしないようにしよう」
「自分を責め続けるより、これからの人生をよくすることに力を使おう」

そんなふうに考えられるようになると、心が少し軽くなるはずです。

まとめ:罪悪感と上手につき合う

罪悪感は、私たちが人間関係を大切にし、よりよい行動を目指すための大切な感情です。でも、強すぎると心の負担になってしまいます。

  • 自分ばかりを責めすぎないこと
  • 今できることに目を向けること
  • 呼吸や瞑想で心を落ち着けること
  • 自分にやさしくすること
  • 自分を許すこと

こうした工夫を少しずつ取り入れながら、自分の心と向き合ってみましょう。

過去は変えられなくても、未来の自分の生き方は、きっと変えられます。

主な参考文献

Azami, R. (2008). 恥と罪悪感の研究の動向1. 日本感情心理学研究, 16(1), 49–64.

Young, K., et al. (2021). A cognitive behavioural therapy (CBT) approach for working with strong feelings of guilt after traumatic events. The Cognitive Behaviour Therapist, 14, e26.

Shen, L. (2018). The evolution of shame and guilt. PLoS ONE, 13(7), e0199448.

Hafenbrack, A. C., et al. (2022). Mindfulness meditation reduces guilt and prosocial reparation. Journal of Personality and Social Psychology, 123(1), 28–54.

Vismaya, A., et al. (2024). Psychological interventions to promote self-forgiveness: A systematic review. BMC Psychology, 12, 258.

ABOUT ME
ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。平和と紛争について中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、少しでも争いのない世界になればいいな、と思っています。 At Eternal Peace Lab, we aspire to contribute to a world without conflict by providing accessible content about peace for both students and adults.
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