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よいコミュニケーション方法とは? 伝える内容よりも伝え方が大事

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「ちゃんと説明したのに、なんでわかってくれないの?」
「正しいことを言ったのに、どうして相手を怒らせてしまったんだろう?」

こんなふうに、誰かと話していてうまく伝わらなかった経験はありませんか?
実は、コミュニケーションでいちばん大事なのは、伝える内容そのものではなく、「どう伝えるか」なのです。

今回は、心理学や脳科学の研究をもとに、「よいコミュニケーションの方法とはなにか?」について、わかりやすくお話ししていきます。

人の心に届くのは“言葉”ではない?

私たちが人と話すとき、多くの場合「どんな言葉を使うか」「どんな内容を伝えるか」に意識が向きます。でも、実際に相手の心に届くのは、言葉の中身よりも“話し方や態度”のほうだとわかってきました。

たとえば、同じ「ありがとう」という言葉でも、

  • 笑顔で明るく言われると、こちらも嬉しい気持ちになります。
  • でも、ふてくされた表情でボソッと言われると、「本当にそう思ってるの?」と感じてしまいますよね。

このように、“伝え方”によって、まったく同じ言葉がポジティブにもネガティブにも受け取られてしまうのです。

「右脳」は気持ち、「左脳」は論理

脳のはたらきから見ても、「伝え方」の大切さがわかります。
私たちの脳は、大きく分けて「右脳」と「左脳」があります。

  • 左脳は、言葉を処理したり、論理的に考えたりする部分。
  • 右脳は、感情や直感、表情などを感じ取る部分。

人と話すとき、右脳は相手の声のトーン、顔の表情、ジェスチャーなどを見て「この人はどんな気持ちで話しているんだろう?」と判断しています。つまり、相手の話を理解するとき、言葉そのものよりも“感情”や“雰囲気”を重視しているのです。

ある研究では、右脳がうまく働かなくなると、人の表情や声の調子から気持ちを読み取ることが難しくなるといいます。それほど、右脳はコミュニケーションの中で重要な役割を担っているのです。

メラビアンの法則:「見た目・声・言葉」の割合

心理学には「メラビアンの法則」という有名な理論があります。

これは、人が話し手の感情を受け取るとき、どんな情報を重視しているかを表したものです。

  • 言葉の意味:7%
  • 声のトーン:38%
  • 表情・しぐさなどの視覚情報:55%

つまり、相手の気持ちを読み取るとき、言葉の内容そのものよりも「どう言ったか」のほうがずっと大きな影響を与えているというわけです。

伝え方の工夫①:まずは「受け止める」

会話の中で特に大切なのが、「相手の言い分を否定せずにまず受け止める」という姿勢です。
たとえば、友達が「最近、部活がつらいんだ」と話してきたとします。

そのとき、「そんなの甘えだよ」とか「気にしすぎじゃない?」と言われたらどうでしょう?
きっと、もうその人には話したくなくなりますよね。

逆に、「そっか、つらいんだね」「どうしたの?」と受け止めてもらえたら、安心して話ができます。これは、「傾聴(けいちょう)」といって、人間関係をよくするための大切なコミュニケーション技法です。

伝え方の工夫②:ネガティブ→ポジティブの順番で話す

誰かに注意をしたり、意見を伝えたりするとき、「伝える順番」もとても大切です。

たとえば、いきなり「これダメだよ」「なんでこんなことしたの?」と言われると、相手は身構えてしまいます。

でも、最初に「がんばったね」と声をかけてから「でも、ここはもう少しこうするといいかも」と続ければ、受け止めやすくなります。
こうした伝え方は「サンドイッチ型フィードバック」と呼ばれています。

最近の研究では、最初にネガティブなことを伝えてから、最後をポジティブで締めくくる伝え方のほうが効果的だという報告もあります。
たとえば、「この点は改善が必要だね。でも、全体的にはすごく良くなってるよ!」というように。

伝え方の工夫③:表情・声・目線も大切

「言い方」の中には、声のトーンや話すスピード、目線、表情などの「非言語コミュニケーション」も含まれます。

  • やさしい表情で話すと、相手は安心して話せます。
  • 落ち着いた声のトーンは、信頼感を生みます。
  • 目を見て話すことで、誠実さが伝わります。

逆に、腕を組んでにらむような態度をしていると、たとえ内容がやさしくても、「怒ってるのかな?」と受け取られてしまうかもしれません。

おわりに:言葉だけじゃ伝わらない

人と話すとき、つい「正しいことを言わなきゃ」と考えてしまいがちです。でも実は、相手にわかってもらうには、正しいかどうかより、「どう伝えるか」のほうが、ずっと大事なんです。

  • 相手の話を否定せずに聞く
  • 気持ちに寄り添ったトーンで話す
  • 伝える順番を工夫する
  • 表情や声の調子にも気を配る

こうした「伝え方の工夫」を意識することで、きっと人間関係はよりよいものになっていくはずです。
ぜひ、日々の会話の中で試してみてくださいね。

主な参考文献

McGilchrist, I. (2012). Can the divided brain tell us anything about the ultimate nature of reality? The Royal College of Psychiatrists.

Borod, J. C., et al. (1990). The role of the right hemisphere in emotional communication. Journal of Clinical and Experimental Neuropsychology, 12(4), 435–448.

Mehrabian, A. (1971). Silent messages: Implicit communication of emotions and attitudes. Wadsworth.

Van-Tuyl, L., et al. (2015). Should you order the feedback sandwich? Efficacy of feedback sequence and timing. Journal of Applied Social Psychology, 45(4), 205–214.

Frontiers in Communication. (2022). Effectiveness, attractiveness, and emotional response to voice pitch and hand gestures in public speaking. Frontiers in Communication, 7, Article 869084.

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ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。平和と紛争について中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、少しでも争いのない世界になればいいな、と思っています。 At Eternal Peace Lab, we aspire to contribute to a world without conflict by providing accessible content about peace for both students and adults.
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