民主主義の国は戦争をしないって本当?

「民主主義の国は戦争をしない」と聞いたことがある人もいるかもしれません。たしかに、自由に意見を言えたり、選挙でリーダーを選べる国では、みんなの意見を聞いて平和に物事を決めていくイメージがありますよね。でも本当にそうなのでしょうか? 歴史やデータを見ながら、その真実に迫ってみましょう。
民主主義ってなに?
まず、民主主義ってどんな仕組みでしょう?
簡単に言えば、「国民がリーダーを選び、みんなの意見で国を動かしていく」制度のことです。選挙があったり、自由に発言できたり、ルールに従って政治が進むのが民主主義の特徴です。これに対して、王様や独裁者など一部の人だけで国を動かすのが「専制主義」と呼ばれる仕組みです。
戦争を始めやすいのはどっち?
歴史のデータを見てみると、民主主義の国が「全く戦争をしない」わけではありません。アメリカやイギリスなど、民主主義の代表的な国々も、過去に多くの戦争を行ってきました。たとえば、朝鮮戦争やベトナム戦争、イラク戦争などがその例です。
一方で、専制主義の国は、他国に攻め込んだり、暴力的に支配したりすることが多い傾向にあります。たとえば、ナチス・ドイツによる第二次世界大戦の始まりや、北朝鮮による韓国への侵攻、ソ連のアフガニスタン侵攻やロシアのウクライナ侵攻などがあります。
つまり、民主主義でも専制主義でも、戦争を起こすことはあるのです。ただし、戦争の起こり方や続き方には違いがあります。
なぜ民主主義の国は戦争をしにくいと言われるの?
それでも「民主主義の国は戦争をしにくい」と言われる理由はいくつかあります。
1. 意見が通りやすいから
民主主義では、国民の声が政治に反映されやすくなっています。たとえば、戦争をしたくないと多くの人が思えば、その気持ちが選挙やデモを通して政府に届きやすくなります。政治家も選挙で落とされるのがイヤなので、むやみに戦争を始めたりしません。
2. メディアや議会がチェックするから
民主主義の国には、自由に報道できる新聞やテレビがあります。もし政府が戦争を始めようとしたら、「それって本当に必要?」と問いかける力があります。国会や議会も戦争に関する法律を通さなければならないので、独断で始めにくいのです。
3. お互いに信頼しやすいから
民主主義の国同士は、「お互いに話し合いで解決できる」と思いやすい傾向があります。価値観が近いので、「まずは話し合いで」となることが多く、いきなり戦争にはなりにくいのです。
それでも戦争はなくならない
では、どうして民主主義の国でも戦争をするのでしょうか?
たとえば、アメリカはテロ対策や安全保障を理由に多くの国と戦ってきました。2001年のアメリカ同時多発テロのあと、アフガニスタンやイラクに軍隊を送ったのは、民主主義国家であるアメリカ自身です。
また、国民の多くが「この戦争は正しい」と思えば、政府も動きやすくなります。ベトナム戦争のときも、最初は国民が支持していたため、戦争が始まりました。
つまり、民主主義の国でも、国民の意見次第では戦争に踏み切ることがあるのです。
代理戦争というやり方もある
戦争の中には、直接戦うのではなく、他の国や団体を通じて争う「代理戦争」という形もあります。
有名な例としては、
- 朝鮮戦争(1950年):中国・ソ連が支援する北朝鮮と、アメリカなどが支援する韓国が戦いました。
- ベトナム戦争(1955〜1975年):北ベトナム(共産主義)と南ベトナム(民主主義)の争いに、アメリカやソ連が支援して介入しました。
このように、民主主義国は「直接は戦わないけれど、武器やお金を送って間接的に戦争に参加する」こともあるのです。
私たちにできることは?
では、民主主義の国に暮らす私たちが、戦争をできるだけ避けるためにできることはあるのでしょうか?
すぐに大きなことは難しくても、日々の中で意識できることがあります。
1. 戦争が起きる理由について考えてみる
戦争は、ただ突然起こるわけではなく、さまざまな背景や原因があります。たとえば、国どうしの考え方の違いや、資源をめぐる争い、誤解や偏見なども関係しています。
「なぜ戦争が起きてしまうのか?」ということを、自分なりに考えてみるだけでも、平和についての理解が少しずつ深まっていきます。
2. 選挙に関心をもつ
選挙は、国の方向を決める大切な場です。誰に投票するかを考えるときに、「この人はどういう社会を目指しているのか?」という視点を持つことは、平和について考えることにもつながります。
3. 情報をよく確かめる
今の時代、インターネットやSNSでたくさんの情報が流れています。でも中には、誤った内容や一方的な主張もあります。できるだけ色々な立場の情報を見て、自分なりにバランスよく考えることが大切です。
まとめ
「民主主義の国は戦争をしない」というのは完全な正解ではないけれど、「戦争をしにくくする仕組み」があるのは確かです。でもそれは、仕組みだけでは足りません。私たち一人ひとりの行動や考え方が、戦争を防ぐ力になるのです。平和を守るために、自分にできることから考えていきましょう。
主な参考文献
- Carpenter, T. G. (1997). Democracy and peace. The Independent Review, 2(1), 59–72.
- Filson, D., & Werner, S. (2004). Bargaining and fighting: The impact of regime type on war onset, duration, and outcomes. American Journal of Political Science, 48(2), 296–313.
- Rummel, R. J. (1995). Democracy and war. Rutgers University Press.
- Council on Foreign Relations. (2023). Eight “Hot Wars” During the Cold War.
- HISTORY.com Editors. (2009). Vietnam War: Dates, Causes & Facts.