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死ぬってどういうこと? 死と向き合うことの大切さを学ぼう

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みなさんは、「死ぬってどういうことだろう」と考えたことはありますか?

「怖い」「考えたくない」「よくわからない」。きっと多くの人が、そんなふうに感じるのではないでしょうか。たしかに、死はいつ来るかわからないし、一度死んでしまったら戻ってこれないから、とても想像しにくいものですよね。

でも、誰もが必ずいつかは死ぬというのは、変えられない事実です。だからこそ、「死」とどう向き合うかは、私たちが「どう生きるか」と深くつながっているのです。

今回は、「死とは何か?」というテーマについて、心理学や哲学の考え方を紹介しながら、人が死を受け入れるプロセスについて一緒に考えてみたいと思います。

「死」は誰にでも訪れる

まず、死とは何でしょうか? 医学的には、呼吸や心臓、脳などのはたらきがすべて止まり、生命が完全に終わった状態を「死」といいます。

そして、これがとても大事なことなのですが――死は誰にも避けられないということです。どんなに若くて元気な人も、いつかは命の終わりを迎えます。これは人間だけではなく、すべての生き物にとって共通のルールのようなものです。

でも、私たちはふだん、あまり死のことを意識しないようにしていますよね。なぜでしょうか?

なぜ私たちは「死」を考えたくないのか?

心理学には、「テラー・マネジメント理論」という考え方があります。これは、「人は死を恐れるあまり、無意識のうちに死を遠ざけようとする」という理論です。

人間は、死を考えすぎると不安になってしまいます。だからこそ、会社や学校に行ったり、部活をしたり、友だちと遊んだりして、日々の生活に集中することで、死のことを考えずにすむようにしているんですね。

死を受け入れるって、どういうこと?

では、もし自分が「あと半年の命です」と言われたら、どんな気持ちになるでしょうか?

最初はきっとショックでしょう。そして、怒りや悲しみ、不安が次々に押し寄せてくるかもしれません。

スイスの精神科医エリザベス・キューブラー=ロスは、重い病気などで余命を告げられた人たちが、死を受け入れていくまでの心の流れを5つのステップで説明しました。

1. 否認(ひにん)

「自分が死ぬなんて信じられない」と、現実を受け入れられない気持ちになります。
これは心を守るための自然な反応で、「まさか自分が…」と混乱することが多いです。
一時的に現実から目をそらすことで、気持ちの準備をする時間になります。

2. 怒り

次第に「どうして自分がこんな目に?」という怒りや不満が強くなってきます。
家族や医者、神様、運命などに対して怒りをぶつけたくなることもあります。
周囲の人にとってはつらいかもしれませんが、本人にとっては大切な感情の表現です。

3. 取引(とりひき)

「もしこれが治るなら、何でもします」と、神様や運命と“約束”しようとします。
病気が治るようにお願いしたり、良い行いをすることで死を避けられないか考えます。
これは、コントロールを取り戻したいという気持ちのあらわれでもあります。

4. 抑うつ(よくうつ)

希望が持てなくなり、「どうせ死ぬんだ…」と深い悲しみに沈む時期です。
これまでの人生や大切な人との別れを思って、涙が止まらなくなることもあります。
つらいけれど、この段階を通してようやく現実を受け入れ始められるのです。

5. 受容(じゅよう)

最後には、「死ぬことは自然なこと」と心を落ち着けて受け入れるようになります。
怒りや悲しみは薄れていき、残された時間を大切に過ごしたいと思えるようになります。
家族や友人との別れを穏やかに準備し、「ありがとう」を伝える人もいます。

もちろん、すべての人がこの順番通りに気持ちが動くわけではありません。行きつ戻りつしながら、少しずつ自分なりの形で「死」を受け入れていくのです。

宗教や哲学は、死をどう考えている?

多くの宗教は、「死は終わりではなく、新しい始まり」と考えています。

たとえば、

  • キリスト教では、死んだ後に天国に行く
  • 仏教では、魂が生まれ変わる(輪廻)
  • イスラム教でも、死後の世界があるとされています

こうした考え方は、「死=こわいもの」ではなく、「次につながるもの」として受け止める手助けになります。

また、哲学の世界でも、「死とどう向き合うか」は大きなテーマです。古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「死は悪いことではない。むしろ魂が自由になる瞬間かもしれない」と話しました。

仏教でも、「すべてのものはいつか終わる(無常)」という教えがあり、死を特別なものではなく、「自然の流れ」としてとらえています。

死を意識することで、毎日がもっと大切になる

「死を考えると、かえって生きることの大切さがわかる」

そんな言葉を聞いたことはありますか?

たしかに、私たちはつい「明日も来るのが当たり前」と思ってしまいます。でも、人生には限りがあると意識すると、「今日という日をどう過ごそうか?」という気持ちが強くなります。

ある研究では、「自分の死を考えたあと、人生の意味や価値を感じやすくなる」といった結果も出ています。

だからこそ、「死を知ることは、生きる力にもなる」のです。

おわりに

「死」というテーマは、たしかに重くて、怖いものに思えるかもしれません。でも、私たちがどう生きるかを考えるためには、「死」と向き合うことがとても大切です。

誰でもいつかは死にます。だからこそ、毎日をどう生きるか、自分にとって大切な人やことは何かを見つめるきっかけにしていきたいですね。

主な参考文献

Becker, E. (1973). The denial of death. Free Press.

Kübler-Ross, E. (1969). On death and dying. Macmillan.

Pyszczynski, T., Greenberg, J., & Solomon, S. (2015). The worm at the core: On the role of death in life. Random House.

Wong, P. T. P., & Tomer, A. (2011). Beyond terror and denial: The positive psychology of death acceptance. Death Studies, 35(2), 99–106.

Yalom, I. D. (2008). Staring at the sun: Overcoming the terror of death. Jossey-Bass.

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ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。平和について中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、少しでも争いのない世界になればいいな、と思っています。 At Eternal Peace Lab, we aspire to contribute to a world without conflict by providing accessible content about peace for both students and adults.
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