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どうしたら幸せになれる? 大事なのは「足るを知る」こと

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「もっとお金があったら…」「もっと人気者になれたら…」「もっと成績がよければ…」
そんなふうに「もっと〇〇だったら幸せなのに」と思ったこと、ありませんか?

でも、どれだけたくさんのものを手に入れても、なぜか心が満たされないことってありますよね。実は、幸せになるために本当に大切なのは、「もっと手に入れること」ではなくて、「今あるものに目を向けて、足りていると気づくこと」なんです。

今回は、仏教の教えや心理学の研究などをもとに、「足るを知る」ことがどうして幸せにつながるのかを、わかりやすく紹介していきます。

「足るを知る」ってどういうこと?

「足るを知る(たるをしる)」という言葉、聞いたことがありますか?

これは、「今あるものでじゅうぶんだと気づくこと」「欲張らず、満ち足りていると思う心のこと」を意味する言葉です。昔から日本の文化や仏教で大切にされてきた考え方です。

たとえば、京都の龍安寺(りょうあんじ)という有名なお寺には、「吾唯足知(われ、ただたるをしる)」という文字が刻まれた石の水入れ「蹲踞(つくばい〉」があります。この言葉は、「私はただ、足りているということを知っている。それが大事なんだ」という意味です。

これは、江戸時代の水戸黄門こと水戸光圀が寄贈したものとも言われていて、茶道の精神にも通じています。つまり、「高価なものを持っているかどうかではなく、心が豊かであること」が大切だという考えですね。

どれだけ成功しても、心が満たされないことがある?

現代では、SNSや広告などで「もっときれいになろう」「もっと稼ごう」「もっとフォロワーを増やそう」といったメッセージがあふれています。もちろん努力することは悪いことではありません。でも、「もっと、もっと…」と際限なく求めていると、心が疲れてしまうこともありますよね。

心理学の研究では、人は何かを手に入れても、その喜びにはすぐに慣れてしまうことがわかっています。これを「快楽の順応(ヘドニック・トレッドミル)」と言います。

たとえば、欲しかったスマホを手に入れても、数か月たてば「新しいのが欲しい」と思うようになる。テストで80点をとっても、「次は90点じゃないと満足できない」と思うようになる。

つまり、どれだけ成功しても、「もっと」という気持ちが強いと、いつまでたっても満足できないのです。

「足るを知る」ことの心理的な効果

では、「足るを知る」ことがどうして幸せにつながるのでしょうか?

心理学では、「感謝の気持ち」が幸福感を高めることがわかっています。たとえば、毎日「今日よかったこと」を3つ書き出す「感謝日記」をつけると、心の健康が改善されたという研究結果もあります。

「足るを知る」ことは、まさに「いま、あるものに感謝すること」につながっています。家がある、食べ物がある、友達がいる、家族がいる、今日も生きている—そんな当たり前のことに目を向けるだけで、心が穏やかになり、安心感が生まれてきます。

また、「足るを知る」ことで、他人と自分を比べて落ち込むことも減っていきます。自分が持っていないものではなく、「いま自分が持っているもの」「自分にできること」に集中することで、自分らしさを大事にできるようになるのです。

仏教や禅の教えから学べること

「足るを知る」は、仏教でもとても大切な教えです。お釈迦さまが最後に弟子たちに伝えたとされる『仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)』というお経の中には、こんな言葉があります。

「知足の者は、貧しといえども富めり。不知足の者は、富めりといえども貧し」

つまり、「足るを知る人は、たとえ物が少なくても心が豊かである。足るを知らない人は、どれだけお金を持っていても心が貧しい」という意味です。

鎌倉時代の禅僧・道元(どうげん)も、「多くの悩みは欲望から生まれる」と説いています。欲が強くなればなるほど、人間関係もストレスも苦しみも増えてしまうというのです。

それよりも、「自分に必要なだけあればいい」「今の暮らしで十分ありがたい」と思えるようになると、心が静かになり、人との関係も穏やかになります。

本当に豊かな人って、どんな人?

あなたのまわりに、「あまり物を持っていないのに、すごく幸せそうな人」っていませんか?

逆に、「なんでも持っているのに、いつもイライラしている人」もいるかもしれません。

どちらが本当に豊かで、幸せな人なんでしょうか?

老子(ろうし)という中国の古い哲学者は、「足るを知る者は富む」と言いました。たくさん持っていることよりも、満ち足りていると感じられることの方が、ずっと大事なのです。

「足るを知る」ために、今日からできること

「足るを知る」心を育てるために、今日からできることをいくつか紹介します。

  • 感謝日記をつける:毎日、感謝できることを3つ書いてみましょう。小さなことでOKです。「今日は天気がよかった」「お弁当がおいしかった」など。
  • 持ち物を見直す:本当に必要なものだけを残してみると、「こんなにたくさんのものがあったんだ」と気づくことがあります。
  • 他人と比べない:SNSで幸せそうにしている人と自分を比べて落ち込んだときは、「人は人、自分は自分」と思って、自分のペースに戻ってみましょう。
  • 呼吸や自然に目を向ける:深呼吸をしたり、空や木を見たりする時間を大切にしてみましょう。「今ここにある」ことを実感するだけでも心が落ち着きます。

おわりに

幸せになるために、大きな成功や完璧な人生を目指す必要はありません。
今、目の前にあるものを「ありがたい」と思えること。
それこそが、真の豊かさであり、心からの幸せにつながる道です。

「もっと手に入れなきゃ」と思ったときは、ちょっと立ち止まってみてください。
そして、「いまあるもの」に目を向けてみてください。
もしかすると、もうすでにあなたは「足りている」のかもしれませんよ。

ABOUT ME
ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。ずっとピースらぼでは、「優しい」と「易しい」の両方の意味をこめて、「やさしい平和教育」を発信しています。中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、いつの日か争いのない社会にできたらいいな、と思っています。 |Eternal Peace Lab shares information about easy-to-understand peace education. By delivering content that students can easily grasp, we hope to one day achieve world peace.
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