人はなぜストレスを感じるの? ストレスコントロールの方法を知ろう

「ストレスがたまってイライラする」「学校やバイトでしんどい」
そんなふうに感じたこと、誰にでもあるのではないでしょうか?
でも、そもそもストレスって何?
どうして人はストレスを感じるのでしょう?
そして、どうすればストレスとうまく付き合えるのでしょうか?
この記事では、ストレスのしくみや原因、そして上手なストレス対処法について、わかりやすく解説していきます。
ストレスってなに?
「ストレス」という言葉は、もともと物に力がかかって変形することを表す物理学の言葉でした。でも今では、心や体にかかる負担のこととして、日常的に使われています。
医学の分野では、カナダの医師ハンス・セリエが「ストレスとは、心や体に加わる刺激(ストレッサー)に対して起こる、生きのびるための反応」だと説明しました。
たとえば、試験前にドキドキしたり、部活の試合で緊張したりするのも、ストレス反応の一つ。これは、自分の身を守るための準備なんです。だから、ストレスは決して「悪いもの」ではありません。
でも、長く強いストレスが続くと、体や心に悪い影響を与えることもあります。
どうしてストレスを感じるの?
1. 心のとらえ方(心理学の視点)
同じ出来事でも、「どうとらえるか」によってストレスの感じ方は変わります。
たとえば、テストで「いい点を取らなきゃ」と思う人と、「まあ、今できることをやろう」と思う人では、感じるストレスが違いますよね。
心理学者ラザルスは、人は出来事を「これは自分にとってどんな意味がある?」と考え(一次評価)、そのあと「自分に対処できる力があるか?」と判断する(二次評価)ことで、ストレスを感じるかどうかが決まると述べました。
つまり、考え方や気持ちの整理のしかたが、ストレスの強さに影響するのです。
2. 体のしくみ(生理学の視点)
ストレスを感じたとき、体の中ではいろいろな変化が起こります。
脳が「危険だ!」と感じると、自律神経が働き、心拍数が上がったり、汗が出たりします。これは「闘うか、逃げるか」のための準備です。
また、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌され、体を一時的に守ろうとします。でも、ストレスが長引くと、このホルモンが出すぎてしまい、逆に免疫力が落ちたり、疲れやすくなったりします。
3. 脳の変化(神経科学の視点)
脳の中でも、特にストレスに関係しているのが「海馬(かいば)」や「扁桃体(へんとうたい)」といった部分です。
● 海馬:記憶や学習をつかさどる場所。強いストレスが続くとダメージを受けてしまい、集中力や記憶力の低下につながることも。
● 扁桃体:恐怖や不安の感情に関係していて、過度のストレスで不安感が強まることがあります。
また、考える力や判断をつかさどる「前頭前野」の働きが弱まると、イライラしやすくなったり、冷静な判断ができなくなったりします。
4. 社会との関係(社会学の視点)
ストレスは、個人の問題だけではありません。まわりの環境や人間関係、社会のあり方もストレスの原因になります。
たとえば、
- 家族や先生との関係がうまくいかない
- 周りと比べてプレッシャーを感じる
- 経済的な不安や進路への心配がある
なども、大きなストレスになります。
また、ストレスを受けたときに相談できる人がいるかどうかも、とても大切です。まわりの支えがあると、ストレスの影響は軽くなります。
ストレスをコントロールする方法
それでは、ストレスと上手に付き合うにはどうしたらいいのでしょうか?
科学的に効果があるとされる、いくつかの方法を紹介します。
1. 考え方を変えてみる(認知行動療法)
「やばい」「ムリかも」と思ったとき、その考えが本当に正しいのか、一度立ち止まって考えてみましょう。
「ちょっと不安だけど、できることはやったから大丈夫」とか「次がんばればいい」といった、前向きな考え方に切りかえることで、ストレスはやわらぎます。
こうした考え方のトレーニングを「認知行動療法(CBT)」といって、実際に病院や学校でも使われています。
2. マインドフルネスを試してみる
「マインドフルネス」は、今この瞬間に意識を向ける方法です。たとえば、深呼吸に集中したり、体の感覚に注意を向けたりします。
すると、過去の後悔や未来の不安から離れて、「いま、自分はここにいる」と感じることができるのです。心が落ち着き、ストレスに強くなれるという効果が科学的にも証明されています。
3. 運動でストレス解消
体を動かすことも、ストレス解消にとても効果的です。
ウォーキングやランニング、ダンスなど、自分が楽しいと思える運動をすると、脳内に「エンドルフィン」という気分をよくする物質が出て、リラックスできます。
定期的に運動をすることで、ストレスに強い体と心をつくることができます。
4. しっかり寝よう
睡眠不足は、ストレスに対する耐性を下げてしまいます。
寝る前にスマホを見すぎない、寝る時間を一定にする、寝る前はリラックスする、など睡眠環境を整えることがとても大切です。
疲れているときほど、しっかり休むようにしましょう。
5. 誰かに話してみよう
友達や家族、先生など、信頼できる人に話すこともストレス対処に効果的です。
話すことで気持ちが整理され、安心感が生まれます。学校のカウンセラーや相談窓口を活用するのもおすすめです。
まとめ
ストレスは、誰にでもある自然な反応です。
でも、放っておくと心や体に悪い影響が出ることもあります。
自分の心や体のサインに気づき、うまくストレスと付き合っていく力を身につけましょう。
大切なのは、「自分に合った方法を見つけて、無理せず少しずつ実践すること」です。
主な参考文献
- Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, appraisal, and coping. Springer Publishing Company.
- McEwen, B. S., & Stellar, E. (1993). Stress and the individual: Mechanisms leading to disease. Archives of Internal Medicine, 153(18), 2093–2101.
- Kabat-Zinn, J. (1990). Full catastrophe living: Using the wisdom of your body and mind to face stress, pain, and illness. Dell Publishing.
- Karasek, R. A., & Theorell, T. (1990). Healthy work: Stress, productivity, and the reconstruction of working life. Basic Books.
- 文部科学省. (2022). 大学生のメンタルヘルスに関する調査報告書.