テロリストってどういう人たちなの? 「テロリスト」と「英雄」の違い

「テロリスト」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
爆弾を使ったり、人をおどしたり、ニュースで見るような怖い人たちを想像する人が多いかもしれません。でも、ある国では「テロリスト」と呼ばれた人が、別の国では「正義のために戦った英雄」としてたたえられることもあります。
たとえば、「ある人にとってのテロリストは、別の人にとっての自由のための戦士(freedom fighter)だ」という言葉があります。つまり、「テロリストかどうか」は、立場や見方によって変わるということです。では、テロリストと英雄の違いは、いったいどこにあるのでしょうか?この記事では、歴史や国際社会の考え方を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
テロリストってどんな人?
実は、世界には「テロリストとはこういう人だ」と決めた正式なルール(国際的な定義)がありません。国連やいろいろな国がテロ対策のルールを作っていますが、「これがテロリストです」と明確に言っているわけではないのです。
ただ、一般的には次のように考えられています。
テロリストとは、政治的な目的のために、暴力やおどしを使って、人々に恐怖をあたえる人たちのこと。
この「暴力」には、武器を使った攻撃や爆弾テロ、ハイジャック、暗殺などがふくまれます。そして「恐怖をあたえる」のは、ふつうの市民や子どもなど、戦いに関係ない人たちをねらうところが大きな問題です。
「自由のために戦う人」とはどう違うの?
ここで問題になるのが、「自由のために戦っている人も、暴力を使うことがあるのでは?」という点です。たとえば、自分の国が外国に支配されていたり、差別をうけていたりすると、「このままじゃダメだ!」と立ち上がる人たちがいます。そうした人たちは、自分たちの自由や人権のために戦っていると考えています。
でも、やり方が問題です。たとえ正しい目的があっても、関係のない人を殺したり、こわがらせたりするなら、それは「テロ」と呼ばれます。
アメリカのレーガン大統領は、次のように言いました。
「自由のために戦う人は、民間人をおどしたり殺したりしない。テロリストは無防備な人たちをねらい、恐怖を広めようとする。」
つまり、「目的が正しくても、やり方がひどければテロリストとみなされる」という考え方です。
歴史から見る「英雄」と「テロリスト」
● ネルソン・マンデラ(南アフリカ)
マンデラさんは、南アフリカで黒人に対する差別(アパルトヘイト)と戦った人です。はじめは平和的な活動をしていましたが、効果がなかったため、一時期は武力での抵抗を行いました。そのため、政府やアメリカから「テロリスト」と見なされていました。
でも、のちにマンデラさんは南アフリカの大統領になり、差別をなくすために努力しました。今では「人権のために戦った英雄」として、世界中でたたえられています。
● アイルランド共和軍(IRA)
イギリスの支配からの独立を求めたIRAという組織もあります。彼らは軍や警察の施設を爆破するなど、暴力を使ったため、「テロリスト」と呼ばれました。でも、アイルランド側から見ると「祖国のために戦った自由の戦士」だったのです。
その後、和平交渉が進み、IRAのメンバーの一部は政治家となり、平和的に問題を解決する道を歩みました。
● パレスチナ解放機構(PLO)
イスラエルと対立するパレスチナ側の組織であるPLOも、以前は武力を使って活動していたため、「テロ組織」と呼ばれていました。でも、その後は交渉の道を選び、アラブ諸国や国連で「パレスチナ人の代表」として認められるようになりました。
なぜ「ラベル」が変わるの?
「テロリスト」とか「英雄」という呼び方(ラベル)は、実は政治的な意味をふくんでいます。たとえば、ある国が自分にとって都合の悪い人たちを「テロリスト」と呼ぶこともありますし、味方になってくれた人たちを「英雄」と呼ぶこともあります。
また、マスコミや学校の教科書、インターネットなどの情報によっても、「正しいと思う立場」がつくられていきます。SNS(XやInstagramなど)では、同じ意見の人だけが集まって、反対の立場の意見をしっかり聞かないまま、相手を悪者だと決めつけることもあります。
だからこそ、ニュースや歴史の出来事を見聞きするときには、「誰が、どの立場から語っているのか?」をよく考えることが大切です。
まとめ:テロリストと英雄の違いは「手段」と「視点」
この記事では、「テロリストと英雄の違い」について見てきました。まとめると、こうなります。
- 目的が正しくても、方法が暴力的ならテロリストと見なされることがある。
- 関係のない人(市民)をねらう行為は、ほとんどの場合テロリズムとされる。
- ある人にとっての英雄が、別の人にはテロリストに見えることがある。
- 歴史をふり返ると、時代や立場によって評価が変わることも多い。
- メディアや教育、SNSの影響で「正義」のイメージが変わることもある。
私たちは、「ラベル」だけで人を判断するのではなく、その人がなぜ、どのように行動したのかをしっかり見て、考える力をつけていく必要があります。