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人権ってなに? 人権の考え方がどのように生まれたのかを理解しよう

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「人権(じんけん)」という言葉、ニュースや社会の授業で見かけたことがある人も多いのではないでしょうか? でも、「人権ってなんだろう?」と聞かれると、うまく説明できない……そんな人もいるかもしれません。

実は、この「人権」という考え方は、長い歴史のなかで少しずつ作られてきたものです。今回は、「人権」の意味と、その考え方がどのようにして生まれたのかを、できるだけわかりやすく紹介していきます。

「人権」ってなんだろう?

「人権」とは、一人ひとりの人間が、生まれながらに持っている大切な権利のことです。

たとえば、

  • 自由に意見を言うこと
  • 安全に生きること
  • 学校で学ぶこと
  • 差別されないこと

これらすべてが「人権」です。つまり、「どんな人でも、誰かに奪われてはいけない権利を持っている」という考え方が「人権」です。

では、どうしてそんな考え方が生まれたのでしょうか?

昔の世界には「人権」がなかった?

実は、昔の社会には「人権」という考え方はありませんでした。

たとえば、古代ギリシャやローマでは、奴隷が当たり前に存在していましたし、女性や貧しい人は政治に参加することもできませんでした。人々の「権利」は、生まれや身分によって決まっていたのです。

そんななか、ある宗教が「すべての人は神の前では平等である」と教えはじめました。それが、キリスト教です。

キリスト教が与えた影響

キリスト教では、「すべての人は神によってつくられ、かけがえのない存在である」と教えています。だから、人種や性別、貧しさに関係なく、すべての人に尊厳(そんげん)がある、と考えるのです。

この考え方は、「人間には生まれつき大切にされるべき権利がある」という人権のもとになる考えでした。

また、中世ヨーロッパのキリスト教の学者たちは、「神がつくった自然のルール(自然法)」があると考えました。この自然法にしたがえば、「人間にはだれでも守られるべき共通の正しさがある」とされ、そこから「人間の権利」が考えられるようになりました。

宗教改革と個人の自由

1500年代に入ると、「宗教改革」という大きな動きがヨーロッパで起こります。これは、マルティン・ルターという人がカトリック教会のあり方に疑問をもち、「人は自分で聖書を読んで信仰すればよい」と言い始めたことから始まりました。

当時の教会では、お金を払えば罪がゆるされるとされる「免罪符(めんざいふ)」が売られていたり、教会の高位の人たちがぜいたくな生活をしていたことが問題視されていたのです。

こうした教会のあり方に反発し、ルターは「人は自分の良心と信仰によって神とつながるべきだ」と主張しました。

このとき、「人は自分で考え、選ぶことができる」という個人の自由の大切さが強く意識されるようになります。これも、人権の大事な考え方の一つです。

哲学者たちが「人間の権利」を考えた

1700年代になると、「啓蒙(けいもう)思想」という考え方が広がります。これは、「人間は理性(考える力)を持っていて、社会をよりよくできる」という考え方です。

この時代に活躍したジョン・ロックというイギリスの思想家は、「人は生まれながらに、生命・自由・財産を守る権利を持っている」と考えました。

そして、「政府はこの人々の権利を守るためにある。もし守らなければ、人々は政府に反対してもいい」という革命の考え方も生まれました。

実際の社会で「人権」が書かれた!

こうした思想が広まったあと、アメリカとフランスで「人権」が国のルールとして書かれるようになります。

  • アメリカ独立宣言(1776年)
    「すべての人は平等に生まれ、生まれつき自由であり、幸せを求める権利がある」と書かれました。
  • フランス人権宣言(1789年)
    「人は生まれながらにして自由で、権利において平等である」と宣言されました。

これが、近代の「人権」のはじまりです。つまり、「すべての人に同じように守られるべき権利がある」と国のルールとして認められるようになったのです。

「人権」が世界中に広がった

でも、昔の「人権」は、まだヨーロッパやアメリカの中だけの考え方でした。実際、植民地にされた国や、女性、奴隷などには、まだその権利は十分に届いていませんでした。

本当に「すべての人」の権利として広まったのは、第二次世界大戦のあとです。

戦争で多くの人が苦しんだことをふまえて、1948年に国際連合(国連)が「世界人権宣言」を出しました。この宣言では、

すべての人間は、生まれながらにして自由であり、平等な尊厳と権利を持つ

と書かれました。

この宣言をきっかけに、「人権」は世界共通のルールとして、多くの国の憲法や法律に取り入れられるようになっていったのです。

まとめ

「人権」は、昔からあるものではなく、長い歴史のなかで、人々が少しずつ考え、作りあげてきたものです。そこには、キリスト教の「すべての人は神の前で平等」という教えや、ルターやロックなどの思想家たちの「人は自由で平等だ」という考え方がありました。

そして、「人権」は国のルールとして書かれ、戦争を乗り越えて、世界中の人が守られるべきものへと広がっていったのです。

わたしたちが、安心して意見を言ったり、自由に生きたりできるのは、こうした歴史の上にある「人権」が守られているからなんですね。

主な参考文献

  • Brown, C. (2000). Universal Human Rights? An Analysis of the ‘Human-Rights Culture’ and its Critics. In R. G. Patman (Ed.), Universal Human Rights? (pp. 31–48). Palgrave.
  • Fukuyama, F. (1992). The End of History and the Last Man. Penguin Books.
  • The United Nations. (1948). Universal Declaration of Human Rights.
  • Edelstein, D. (2018). On the Spirit of Rights. University of Chicago Press.
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ずっとピースらぼ|Eternal Peace Lab
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ずっとピースらぼ管理人のわんぞーです。イギリスの大学院で平和学を学び、その後国際協力の専門家や大学の教員として仕事をしてきました。平和について中学生や高校生にもわかりやすい内容を届けることで、少しでも争いのない世界になればいいな、と思っています。 At Eternal Peace Lab, we aspire to contribute to a world without conflict by providing accessible content about peace for both students and adults.
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