そもそも平和ってなに?

「平和」という言葉を聞いたとき、あなたはどんなことを思い浮かべますか?
たとえば「戦争がないこと」「ケンカをしていないこと」「毎日が穏やかに過ぎていくこと」など、人によってイメージはさまざまかもしれません。でも、当たり前のように使っている「平和」という言葉、実はとても奥が深いんです。今回は、「そもそも平和って何?」というテーマで、わかりやすく説明していきます。
「平和」って、ふつうはどういうこと?
まず、多くの人が「平和」と聞いて思い浮かべるのは、「戦争や争いがない状態」です。たとえば、爆弾が落ちてきたり、銃弾が飛んできたりするような場所ではなく、安全に暮らせる日常がある国を「平和な国」と感じるでしょう。
日本のあるアンケートでは、「平和」と聞いて「戦争がない」「みんな仲がいい」と答える人が多かったそうです。また、「自然と人が調和していること」や「安心して暮らせる社会」などを挙げる人もいました。つまり、平和は「争いがない」という消極的な意味だけでなく、「安心・安全で気持ちよく暮らせる状態」としても捉えられているのです。
辞書ではどう説明されている?
辞書や百科事典も「平和」についていろいろな定義をしています。
たとえば、ブリタニカ国際大百科事典では、平和を「戦争が行われていない状態」と説明しています。ただし、それだけではなく「非暴力的な方法による社会のあり方」というように、もっと広い意味を持つとも書かれています。
英語の辞書でも同じように、「争いや混乱がない静かな状態」や「人間関係や社会の中で調和が保たれていること」が平和だとされています。つまり、単に戦争がないだけではなく、人々が安心して暮らせる環境そのものを「平和」と呼ぶということです。
平和学って知ってる?
「平和」については、実は「平和学(へいわがく)」という学問分野があります。これは、第二次世界大戦のあと、世界中の人々が「戦争のない世界をどうやって作るか」と考える中で生まれました。
この分野を作った一人が、ノルウェーの学者ヨハン・ガルトゥングさんです。彼は「平和はただ戦争がないだけじゃない」と主張しました。つまり、「戦争が終わっただけでは平和じゃない。社会にある差別や貧困、文化的な偏見などもなくしていかないと、本当の意味での平和とは言えない」という考え方です。
「ネガティブ・ピース」と「ポジティブ・ピース」
平和学では、「平和」には2つの種類があるとされています。
- ネガティブ・ピース(消極的平和)
→ 戦争や暴力が起きていない状態 - ポジティブ・ピース(積極的平和)
→ 暴力だけでなく、貧困や差別などの社会の問題もなくなり、人々が協力し合える状態
たとえば、学校でいじめやケンカがなくても、クラスの中に「話しかけにくい雰囲気」や「無視されている子」がいるとしたら、それは表面的には平和でも、心から安心できる環境とは言えません。これが「ネガティブ・ピース(争いが見えない状態)」です。
一方で、みんなが自然に声をかけ合い、困っている人がいれば助ける、違いを認め合えるような関係がある学校は、「ポジティブ・ピース(本当の意味での平和)」に近い状態です。つまり、「トラブルがない」だけではなく、「みんなが安心して過ごせること」が本当の平和なのです。
「暴力」って、たたくことだけじゃない?
平和学では「暴力」のことも、ただの殴り合いや戦争だけではないと考えます。
- 直接的暴力:殴る、蹴る、戦争、ケンカなどの目に見える暴力
- 構造的暴力:社会の仕組みの中にある差別や不平等(たとえば、お金持ちだけが医療を受けられる社会)
- 文化的暴力:差別を正当化する考え方(たとえば、「男性は強くなければいけない」「女性はおしとやかにするべきだ」というような偏った価値観)
つまり、目に見える暴力だけでなく、「見えない暴力」も平和の妨げになるというわけです。
暴力をなくすにはどうしたらいい?
では、どうすれば暴力のない社会、つまり「平和な社会」を作れるのでしょうか?
平和学ではいくつかの方法が提案されています。
- 対話や話し合いを大切にすること
相手と意見が合わないときでも、暴力ではなく、話し合いや交渉によって解決をめざす姿勢が大事です。 - 非暴力の行動
ガンジーのように、暴力を使わずに社会を変えていこうとする方法です。デモや署名活動もこの一種です。 - 平和教育
小さな頃から、「相手の立場を理解すること」や「争いをどう解決するか」を学ぶことが大切です。 - 貧困や差別をなくす取り組み
不平等があると、それが怒りや争いの原因になります。すべての人が公平に扱われる社会をめざすことが必要です。
おわりに:あなたにとっての「平和」とは?
「平和」とは、ただ戦争がないことだけではなく、人々が安心して暮らし、差別や不平等のない社会をつくっていくこと。暴力にはいろいろな形があり、それをなくすには時間も努力も必要ですが、私たち一人ひとりの考え方や行動が、その第一歩になります。
あなたにとっての「平和」とは何ですか?
ぜひ一度、じっくり考えてみてください。